プロローグ
1
ウィル・ホーク 2015-10-26 00:38:43
199X年、東京。
登りのエスカレーターの下で、少年がエスカレーターに乗る女性に狙いをつけた。
これから訪れるであろう至福の光景に想いを馳せると、少年はゴクリと固唾を呑んだ。
しかし、女性のスカートの丈は思ったよりも長かった。結局は思い描く光景が訪れる前に、女性は次のフロアへと足を進ませる。
「くそ、もうちょっとだったのに」舌打ちをして、次のターゲットを決める。
「なにがもうちょっとだよ」
声がした方を見やると、腐った残飯を見るような目で視線を送る金髪の女性。その傍らには同じ目で視線を送る、緑髪の女性。
「いっぺん死んじゃえ☆」
金髪の女性がそう言い放つと、強烈な殺気が少年を突き刺した。
少年の奥歯がガチガチと鳴り出す。
「待ってななねん、ここに魔界からの住人が侵略してくるという情報をリークしたのでげす」
恐怖のあまり、語尾がおかしくなる。
「へぇ」
どうでも良さそうに聞き流すと、ななねんと呼ばれる金髪の女性は肘鉄を少年の顔面に沈めた。
「んほォオオ!!」
華麗なトリプルアクセルを決めながら、少年は地面に叩きつけられる。
「てぃむにす、お願い!僕をタスケテ!」
てぃむにすと呼ばれる緑髪の女性は懇願する少年を一瞥すると、嘲笑を頬に称える。
「無理☆」
少し可愛らしくそう言い放つと、てぃむにすは手をひらひらと振り、ななねんに引きずられていく少年をいつまでも見送った。
「そんな殺生なァァァ」
「しね、しぬのだ」
少年を外まで引きずり出したななねんは、容赦なく少年の顔面にガツガツと蹴りをいれる。「くたばれ!女の敵!」
ズタボロになりながら、少年は言葉を捻り出す。
「待って、ななねん……」
ななねんの攻撃が一旦止んだ。
「なんだよ」
「ぱんつみえてる……」
その言葉を聞き届けると、今度は馬乗りになってガンガン殴り始める。
それは少年の今際の言葉となった。
2
ウィル・ホーク 2016-01-16 13:01:01
「井之頭公園での事件、ニュースを見た方は知っていると思いますが」
都内のとある高校、朝のホームルーム。教壇で教師が、先日発生したという殺人事件について生徒に注意を呼び掛けている。
「皆さんと同じ年頃の女の子が、バラバラにされたと報じられています」言うと教師は溜息を一つ吐いて。
「最近は物騒な事件も増えてきました。学校を出たら寄り道せず、真っ直ぐ帰りましょう。以上、ホームルーム終わり」
「きりーつ」
ホームルームが終わるのを確かめると、生徒の一人が先んじて立ち上がり、教室内の生徒達に号令を掛ける。
「れーい、ちゃくせーき」
皆が席を立ち、頭を下げ、また席に着く。どこにでもある示し合された学校風景。
教室を去る教師の背中を見届けると、各々が次の授業までの時間を持て余しはじめる。
「スティーヴンs、そのケガはどしたの?」顔が湿布塗れの少年のなりを見て、ジザベル・エッセがぼろぼろの少年に声をかける。
「いや、べつに……」スティーヴンは言葉を濁すと、耳打ちするように囁く。「今日も可愛いね、えっせっせ」
「き・も・い☆」
そう吐き捨てると、エッセはななねんこと、桐生七音の許へと歩み寄る。
「なける」
ぼろぼろの少年、スティーヴンは一言そう呟くと、教室内に居る女子生徒達の観察を始めた。
「ねね、聞いてよななっち」
「どうしたのえっせたん。今日も可愛いね」
七音は悪戯っぽく笑いながら言う。本心半分、からかい半分と言ったところか。
「ななっちほどでも~」
慣れているのか適当に流すと、「それはそうと」とエッセは本題の話を始めた。
「飯田橋にね、猫カフェなるものが出来たんだよ!」
「猫カフェ?!」
瞬間、七音の脳裏にはカップに収められた子猫の様子が浮かび上がった。頭からもしゃもしゃ、ずぞぞぞぞと食べられる子猫。
「やめたげてよぉ!!」
「え、えぇえ??」
突然の七音の必死の訴えに、エッセはただただ困惑するしかなかった。
DB-NETのBBSより。そのままコピペ。
No
名前・日付
- 最終更新:2016-05-31 14:46:07